「レーザーの研究をしてる」「レーザーに関する仕事をしている」と言うと、
よく、『レーザーってあのレーザー兵器?』という質問をされます。
そこで今回は、大学でレーザーの勉強をし、現在レーザー関連の仕事をしている立場から
レーザー兵器の可能性を真剣に考えてみました。

ここでは、レーザー兵器として、スナイパーライフルを想定します。

レーザーライフル

レーザーライフル

レーザーライフルの可能性

以下、レーザーを使ったスナイパーライフルの利点を考え付く限り書いてみました。

  1. 射程距離は数km(レーザーは拡散しない)
  2. 精度100%(風、重力の影響がない。反動もなく、発射速度は光速)
  3. 攻撃力が可変(エネルギーなどを切り替えることで可能)
  4. 敵に見つかりにくい(銃声、煙、銃口の火花がない。また、薬きょうもない)

素晴らしい兵器です。最も安全で強力な兵器と言ってもいいんじゃないでしょうか?
特に、精度が100%と、攻撃力が可変というところがいい。
威嚇射撃にこれほど最適な兵器もないでしょう。
弾丸を使った場合は、命中すれば必ず重傷を負いますが、
レーザーを使えば軽い火傷ですみますしね。

レーザーの出力は大きければ大きいほど攻撃力は増しますが、
出力の大きなレーザー光源は巨大なものになるので、
標的に応じた出力のレーザー光源を使うのもいいでしょう。

物質を融解、破壊する場合に考えなければいけないのはレーザーの
ピーク出力ですからレーザー兵器の光源はパルスレーザーがいいでしょう。
(連続発振レーザーでは仕組みも簡単で、小型化も容易ですが、
攻撃力はパルスレーザーに劣ります。)

下の図は、連続発振とパルス発振の違いを示したものです。

連続発振とパルス発振

連続発振とパルス発振

次の図は、パルスレーザーの平均出力とピーク出力の関係を示した図です。

平均出力とピーク出力

平均出力とピーク出力

ピーク出力を大きくする方法は

  1. 繰り返し周波数を小さくする方法
  2. パルスの時間幅を短くする方法

の2つがあります。

繰り返し周波数を小さくする場合
パルスレーザーの繰り返し周波数を数百kHz程度に小さくすると、
1パルス当たりのエネルギー(パルスエネルギー)が大きくなり、
ピーク出力も大きくなりいます。しかし、繰り返し周波数が小さいレーザーは
一般的に大きなシステムとなってしまうので、携帯型の兵器に適していません。
この問題を解決するのは、ファイバーを結晶に用いたファイバーレーザーです。
ちなみに、僕の会社ではこのファイバーレーザーに関する業務を行っています。

パルスの時間幅を小さくする場合
産業界では非加熱加工を可能にする超短パルスレーザーが注目されていますが、
レーザー兵器も、この超短パルスレーザーが有効だと考えられます。
超短パルスレーザーを使うことで、レーザー光はステンレスなどを容易に貫通することができます。
また、パルス幅を変えることで攻撃力を約1000倍の範囲で変化させることができます。

現状でレーザーライフルを作れるか?

ただ、現状の高出力パルスレーザーはそれほど安定ではありません。
ほとんどの場合、レーザーは机の上などに固定して使っており、
安定な直流電源と、物によってはレーザーを発生させる結晶の温度を
下げるために特別な装置が必要です。

以上の考察により、携帯可能なレーザーライフルの開発は現状は無理です。
しかし、これを真剣に開発しているのが米国。
科学の歴史は戦争の歴史だとも聞きますが、
レーザーテクノロジーのブレークスルーは米国の兵器産業から生まれるかもしれませんね。

ドラゴン

Man-portable Integrated Laser Assault Rifle

参考文献

Wired”Real-Life Laser Rifle:army goal”