NICT、衛星~地上間の偏光特性の測定に成功。量子鍵配送実現へ一歩前進
独立行政法人情報通信研究機構(以下、「NICT」という。理事長:宮原秀夫)宇宙通信ネットワークグループは、低軌道地球周回衛星を利用して、世界で初めて高精度なレーザ光による衛星~地上間の偏光特性の測定に成功しました。これまで、高精度な光源を用いて衛星-地上間で偏光特性を実際に測定した例はまだなく、宇宙光通信に役立つとともに、将来の宇宙量子鍵配送のシステム設計を高い精度で行うことが初めて可能になりました。この成果は、米国オンラインジャーナル『Optics Express』(11月23日版)に掲載されました。
該当論文はこちら
PDF: http://www.opticsinfobase.org/DirectPDFAccess/23221380-BDB9-137E-CE3EA24BB3405A31_190651.pdf?da=1&id=190651&seq=0
※Optics Expressは無料で誰でも見ることができます!
以下、引用:NICT 報道資料
http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h21/091123/091123.html
【予備知識】
量子鍵配送
微弱な光が持つ粒子(光子)の物理的性質である、一つ一つの量子状態(偏光など)を利用して送受信者間で暗号用の鍵を共有する通信方式。盗聴者が観測(盗聴)を行うと量子状態が歪むため盗聴を見破ることが可能となる。量子鍵配送と、一度しか暗号を使わないワンタイムパッドと呼ばれる方法を用いることで、完全秘匿通信が可能になる。量子鍵配送と、一度しか暗号を使わないワンタイムパッドと呼ばれる方法を用いることで、完全秘匿通信が可能になる。
光衛星間通信実験衛星「きらり(OICETS)」
数万キロメートルを隔てた衛星と衛星の間で、レーザ光を使った光通信(光衛星間通信)実験を行うために開発されたJAXAの技術試験衛星。「きらり(OICETS)」は2005年8月に打ち上げられ、同年12月に、欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた先端型データ中継技術衛星「AR ARTEMIS」との間で、衛星-衛星間光通信実験に成功している。また、2006年にはNICTの衛星-地上局の間での光通信実験にも成功し、2008 年からは、NICTから提案した偏波特性の検証など新たな研究課題の実証のため、追加実験として実施された。
【背景】
現在広く普及している暗号は、コンピュータの能力が飛躍的に向上すると、解読される危険性を有していますが、量子鍵配送では将来どんなに科学技術が進歩しても、絶対に盗み見られないのが特徴です。量子鍵配送技術は、光ファイバー伝送では減衰や雑音のため300kmが伝送限界といわれていますが、人工衛星を用いるとさらに遠方に伝送が可能で、地球全体へのグローバルな量子鍵配送が可能となります。これまで、高精度な光源を用いて衛星―地上間で偏光測定された例はありませんでした。なお、本衛星実験の実施は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究契約に基づき行われたもので、NICT独自に解析を行いました。
【今回の成果】
NICTでは、宇宙光通信や量子鍵配送の研究開発を行っています。今回、NICTの光地上局(図1)において、JAXAが2005年8月に打ち上げた低軌道地球周回衛星である「OICETS(きらり)」(図2)を用いて、衛星―地上間での偏光の劣化が、2.8%以下という結果を、世界で始めて観測に成功しました(図3、図4)。空間での量子鍵配送には、そのシステムの簡便性と安定性が得られる点から、光子の偏光を用いた鍵配送が一般的に用いられますが、もし偏光の度合いが劣化してしまうと安全な鍵の共有を行うことはできません。本結果から、上層大気を含む大気の影響は、量子鍵配送に問題ないレベルに抑えられていることが確認されました。
【今後の展開】
衛星―地上間の偏光特性が実測できたことにより、量子鍵配送の回線計算が可能になり、人工衛星を用いた地球規模での量子鍵配送の実現への大きな手がかりを得たことになります。また、実際に宇宙光通信の実用化を目指した実験衛星の設計を進めることが可能となります。
(以上、引用終わり)
下の動画は望遠鏡に設置したカメラで取得した衛星方向の画像。明るい点がOICETS衛星からのレーザを示している。


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