糖尿病網膜症への網膜光凝固術は、網膜虚血部にレーザーを当て、新生血管の発症や進展を抑制する治療法で、30年近く前から行われている。ところが、網膜症早期で視力が良好な患者への施行が広がるのに伴い、詳細な理由は分かっていないが、網膜の中心にある黄斑部に浮腫を来し、術前よりも視力が低下してしまう例が報告されるようになっている。

NTT東日本東北病院眼科部長の志村雅彦氏は光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)を使って黄斑部の形態を評価し、どういった場合に光凝固後の黄斑浮腫を起こしやすいかを研究している。

志村氏は「検討の結果、光凝固術で視力が低下した患者は、黄斑部周辺が健常者よりも肥厚していた。特に中心窩から半径100~300μmの領域が肥厚している場合、低下の可能性が高かった」と分析。そこで、光凝固術を行う前にあらかじめステロイドをTenon嚢下に直接注入しておく方法を考案した。

実際、志村氏らは、両眼の網膜中心窩厚と視力が同程度の10症例を対象に、片眼だけトリアムシノロン20mg/0.5mLを投与し、その1週間後から、両眼に対して光凝固を2週間ごとに計4回施行した。その結果、投与して24週間後には、片眼だけ黄斑浮腫が有意に抑制され、視力維持にも効果があることが明らかになった。ステロイドを投与する際には、副作用として眼圧の上昇や眼内炎などが生じる可能性もあるが、1例も認められなかったという。

参考:日経メディカルオンライン 「レーザー後の視力低下をステロイドで予防」

レーザー光凝固術の原因

網膜の血管がつまり、網膜が酸素不足になると新生血管が発生する。そこで、酸素不足に陥った網膜を間引き眼内の酸素需要を減少させる。これにより新生血管の増殖の抑制されるだけでなく、黄斑部などの大切な箇所への酸素不足も改善される。

レーザー光凝固の原理は以下の通りである。レーザーを黄斑部以外の、結構の悪い部分(黄斑部との中間、周辺網膜全体または一部)に照射すると、網膜組織の色素で光吸収が起き、熱が発生する。その熱の作用により組織のタンパク凝固が発生する。